避妊手術・去勢手術の流れ・方法
避妊手術・去勢手術を検討する前に、手術の流れについて把握しましょう。
手術前日は絶食
手術の前日は、晩から絶食をします。
また、療法食にて治療を受けている犬など、水を多く飲む犬は、水を飲む事も禁止されます。
これは、胃の内容物が、手術中に逆流し、窒息を起こさない為に行います。
犬の体力を考慮し、手術前の準備は行われる為、獣医師の指示に従いましょう。
手術当日は入院、又は日帰り
性別により、当日以降の流れが異なります。
【メスの場合】
手術時間は15〜30分程度で終了します。
これは、『卵巣のみ』または『卵巣と子宮』の摘出により異なります。
選定すべきポイントは下記《避妊手術の種類》にてご紹介します。
メスの手術は、開腹手術の為、1泊入院をし、問題が無ければ退院が通例です。
しかし、高齢の犬や、子宮頸がんなど、子宮に関わる病気に伴う避妊手術の場合は、術後の回復が遅い為、2泊以上入院する場合もあります。
【オスの場合】
手術時間は20分程度で終了します。
オスは精巣を摘出する為、開腹の必要は無い為、比較的、リスクが抑えられます。
その為、術後は日帰りが通例です。
しかし、手術に成功したものの、手術中に突然体調に変化が出たり、傷口が開き、経過観察が必要な場合など、去勢手術であっても入院を勧められる事があります。
術後1週間から10日で抜糸
手術が無事に成功したら、1週間〜10日を目安に抜糸を行います。
この期間中は、犬が傷口を気にし、舐めてしまう為、傷口を開かせない為、エリザベスカラーを装着します。
また、この時期の注意点として、シャンプーは控えましょう。
この時期は、傷口を糸で無理に合わせている状態です。
なるべく傷口を乾かし、早く傷口が癒着する様にします。
また、散歩も控えましょう。
特にダックスフントやコーギーなど、短足の犬種は地面に近い分、ウィルスや細菌に侵され易い為、この期間だけは、室内で運動をしましょう。
抜糸が終了すれば、手術は無事に完了です。
続いては、主な治療費についてご紹介します。
不妊手術は個体により料金が異なります。
以下の表は、手術費用の目安です。
大きさ |
去勢手術 |
避妊手術 |
---|---|---|
小型犬 |
15,000〜30,000円 |
20,000〜30,000円 |
中型犬 |
20,000〜30,000円 |
40,000〜50,000円 |
大型犬 |
30,000〜50,000円 |
ー |
不妊手術は、各地方自治体から、約2,000〜10,000円の助成金が出る事があります。
下記URLは、助成金を支給している市区町村の一部です。ご参照下さい。
動物病院により費用が異なるのは、自由診療と呼ばれる、病院が自由に医療費を決められるシステムの為です。
また、手術を受ける年齢により、値段が異なる事は滅多にありません。
続いては、手術に適した年齢についてご紹介します。
不妊手術は生後6ヵ月以降に行いましょう
不妊手術は、性成熟する前である生後6〜10ヵ月の時期に行います。
また、何歳までに手術を行わなければいけないという年齢制限はありません。
ここでは、この時期に注意すべきポイントをご紹介します。
【メスの場合】
メスの場合、初潮が来る前に避妊手術を行いましょう。
また、生理中に避妊手術をする事は出来ません。
初潮が早い犬は、生後4ヵ月には迎えてしまう為、手術前に、犬がいつから生理を迎えたか、また、生理期間中ではないか、獣医師から質問を受けます。
必ず確認をしておきましょう。
【オスの場合】
オスの場合、足を上げておしっこをする、マーキング行動をする前に、手術を行いましょう。
マーキングは、オスが性成熟をした事を意味しており、マーキングを覚えてから去勢手術をした場合、約50%のオスはマーキングをし続けます。
ここまでが、不妊手術を検討する前に知っておいて頂きたい知識です。
続いては、不妊手術を検討する上での知識をご紹介します。
不妊手術によるメリット3選
不妊手術は、麻酔をかけ、健康な体の一部を摘出する為、どうしても悪い印象を持たれてしまいますが、以下の様なメリットがあります。
望まない妊娠を避ける
日本では、約10万頭の犬が殺処分に合っており、その半数が生後間もない子犬と言われています。
これは、飼い主によるペットの管理の甘さによるものです。
日本に1匹でも不幸な犬を減らせるのは、人間の心掛け1つです。
発情による肉体的負担を緩和
動物の病気やケガは、繁殖行動や性ホルモンに大きく関係があります。
特にメスの場合は、発情・妊娠・出産により、肉体的負担が大きいです。
子孫を望まないのであれば、避妊手術は効果を成すでしょう。
穏やかになる
不妊手術を行うと、性格が穏やかになり、攻撃性が緩和されます。
特にオスの場合、メスを奪い合い、喧嘩する事が、ほぼなくなります。
不妊手術によるデメリット2選
子犬が初めての混合ワクチンを摂取する際、不妊手術の必要性を熱心に説く獣医師がいますが、メリットしか言わない場合があります。
物事には、デメリットもある事を忘れてはいけません。
肥満
生殖器を摘出するという事は、その分、消費するカロリーが減ります。
その上、異性を求める行動力が失せる為、太ってしまう犬もいます。
全身麻酔による手術
不妊手術を行う際、全身麻酔を行います。
不妊手術は、性成熟する前の生後6ヵ月を目安に行う為、麻酔に耐え切れず、亡くなる事例もあります。
詳しくは、下記の《不妊手術の失敗例》にてご紹介します。
不妊手術の失敗例
獣医師が最も多く行う手術は、不妊手術です。
最も多く行う手術による慣れからか、不妊手術を当たり前の事として、話を持ち掛ける獣医師も少なくありません。
しかし、当たり前の様に行う手術であっても失敗する事があります。
リスク1 麻酔アレルギー
麻酔にアレルギーを起こす犬が稀にいます。
これに伴い、泡を吹いたり、七転八倒し、無言の帰宅となる事もあります。
手術前は、同意書にサインをしますが、ほぼ全ての同意書に、麻酔に関するアレルギー反応の記載はされています。
また、麻酔によりアレルギーを起こす犬は、100匹に1匹いないとされていますが、確率は0%ではありません。
リスク2 犬種
フレンチブルドッグやペキニーズなど、鼻ぺちゃと呼ばれる、短頭種の場合、麻酔を使用した際、気道の確保が一般的な犬に比べ、難しい事が特徴です。
しかし、短頭種の場合、犬の顔を見れば、事前に対策が取れる為、失敗した事例を聞いた事はありません。
手術を受ける際の知識として備えておくと良いでしょう。
これら2種類のケースは、その犬の体力や特徴を獣医師が把握していない為に起きる失敗です。
続いて紹介する《不妊手術の種類》においても、獣医師に任せるだけではなく、疑問に思った事は全て獣医師に投げかける事が大切です。
避妊手術の種類
避妊手術には、『卵巣のみ』を摘出する『卵巣摘出術』と『卵巣と子宮』を摘出する『卵巣子宮摘出術』の2種類があります。
一般的には、『卵巣子宮摘出術』を行います。
しかし、持病を抱えているなど、体力が無い犬は、出血が少なく、傷口が小さくて済む『卵巣摘出手術』を行います。
まとめ
不妊手術は、あくまで、愛犬に望まない繁殖を防止する為の手段です。性別を問わず多頭飼いをしている家庭や、犬の発情がストレスになる場合は、手術を受けるのも良いでしょう。
しかし、犬が持病を抱えていたり、麻酔によるリスクが怖い場合、飼い主が管理を行えるのであれば、無理をしてまで行う手術ではありません。
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